• ホーム 》
  • 沖公研ニュース 》
  • 自然を活かし、活かせる環境政策のヒント~ 財団 金城浩二理事に聞く(前篇)~【レポート】

みなさまの声をお聞かせください

投稿フォームへ

沖公研ニュース

自然を活かし、活かせる環境政策のヒント~ 財団 金城浩二理事に聞く(前篇)~【レポート】

琉球弧の島々は、海中から隆起したサンゴ礁そのもの。私たちの住む沖縄の島々は、イノー(サンゴ礁内の浅瀬)に生育する海の幸に恵まれ、先人たちは、自然と共生・協同するライフスタイルを創造し、受け継いできました。また、サンゴ礁の縁(外礁)が天然の防波堤となり、琉球弧の陸地と人間生活の環境が保たれてきました。

サンゴ礁の広さは、地球の海洋面積の約0.2%にあたるといわれ、約93,000種の動植物が生息しており、そのうち、約25%(約23,250種)がサンゴ礁に育まれているともいわれています。地球上の海洋全体の約4分の1の生態系がサンゴ礁に形成された海洋の恩恵を受けている現状は、非常に貴重だと世界中が注目しています。

しかし、現代では伝統的なライフスタイルは忘れ去られ、「環境保全」の意識を欠いた開発により、サンゴに代表される海の環境が危機に瀕しているといわれています。そこで、新たな公共の可能性を探るべく、また「サンゴの保護活動」の現在を学ぶために実地調査を行いました。

自然の恵みを守り、育てる社会

読谷村で、「有限会社海の種」を経営し、サンゴとサンゴ礁の育成・保全に取り組む、当財団の金城浩二理事は、「サンゴとサンゴ礁をめぐる自然環境の保全は社会全体で解決を図ってはじめて継続できる。保全は専門研究者の専売特許ではなく、私たちのライフスタイルが自然のサイクルに適合するように工夫する営みだ」と強調し、生活そして人間の視点と感覚が大事だと説いています。

環境保全は人間的な社会生活

琉球石灰岩はサンゴとサンゴを活かしてきた微生物が作りあげた化石であり、多孔性の特徴を持っています。その岩盤は高い保水力を備えており、湧水、池や井戸をつくりだし、琉球弧の動植物はもちろん、私たちの社会にも、貴重な水源をもたらしています。また、山から川を経て、海に流れ込んでゆく、富栄養な水を浄化し、海水に戻す働きをイノーとイノーに息づく動植物群が担います。サンゴ礁こそ、琉球弧の自然に最適な水の循環システムなのです。そして、沖縄の伝統的な集落を見ると、公共の通路は石畳や砂利で舗装され、また、屋敷の礎石、ヒンプン(ついたて)さらに周囲をわける壁に至るまで、それらの主要な建材には、サンゴ礁の化石である琉球石灰岩が使われています。

「サンゴ礁は海の中から陸の上まで、形を変えながら、いつも私たちに恵みを与え続ける貴重な存在。たとえば、サンゴ礁は台風の襲来が頻発する沖縄にあって、天然の防波堤として島々を守っています。このサンゴ礁の防波堤を同等の構造物を人工で構築し、維持するとなると、沖縄県だけで、年間約600億円の資金が必要になると推定されています(典拠:環境省による経済効果試算)。サンゴが毎年、少なくとも600億円相当の恩恵を生み、与え続けてきていることは注目に値する」と、金城理事は強調します。

サンゴ礁は、私たちの子や孫にとっても、たいせつな財産。そして、サンゴ礁の保全が必要だという考え方も、今の世の中には以前にも増して受け入れられやすくなってきたと思います。しかし、現代的とされる環境保護・保全は、「守り伝えるべき自然は手つかずのままに囲い込み、人間社会とは区別する(隔離させる)」という思想が基礎にあるとされています。それは19世紀前半のヨーロッパ社会に表れた崇高(すうこう:Sublime)という考え方ですが、平たくいえば、「人間の力を受け付けない、自然の力が持つ厳しさには手を付けない」というものです。

しかし、金城理事は「『見るな!さわるな!入り込むな!』という態度だけでは、サンゴを守り、育ててゆけなくなることが考えられる。サンゴを根付かせ、育て、広げるまでには、多くの人の協力が必要不可欠。また、サンゴのすばらしさを皆に認めてもらうには、サンゴをなるだけ身近に見聞し、触れ合う機会を設ける努力が求められている」と指摘されるとおり、自然を守り、育てるのは人間社会なのです。(続)

(主任研究員 玉城有一朗)

苗床に育つ、未来のサンゴたち苗床に育つ、未来のサンゴたち

サンゴの生育に適した海水環境が再現されたミクロコスモス「海の種」サンゴの生育に適した海水環境が再現されたミクロコスモス「海の種」

「サンゴを育て、ひろげるのは、ハコモノの水槽ではなく、サンゴが生まれたコスモスを再現する設備と人の心です」と力説する金城理事「サンゴを育て、ひろげるのは、ハコモノの水槽ではなく、
サンゴが生まれたコスモスを再現する設備と人の心です」と力説する金城理事